| くる | こう | もん | ||
| 狂 | え | る | 肛 | 門 |
自宅の前にタクシーが滑り込むや否や,
森本(仮名)は運転手に「お金とってきます」と言い置き,
自宅のベルを鳴らした.
ベルを鳴らした.
鳴らした.
誰も出てこない.
森本(仮名)の自宅の玄関は,
階段を上がったところにそのドアがある.
しかし何の動きも見えない.
鳴らした.
ベルを鳴らした.
「淳(仮名)! どうしたの!」
いきなり上方でドアが開き驚愕の表情で顔を出した母親,
「いいからあのタクシー五千円いま金がな五千持ってき払わとにかく五千円」
「どうしたの! 怪我はどうなの! 大丈夫なの!」
「いいから五千円!」
もはや股間はどうでもいい.森本(仮名)は
全裸の上に羽織ったコートを
もはや押さえようともせず
大きなストライドで
自宅の玄関への階段を
二段またぎに
駆けのぼった.静かな住宅街の
その一軒の白い家の
その二階にある玄関へと伸びる階段に
黒いコートが大きくひらめき,
生まれたままの姿の若者が飛び出し,
次の瞬間,
建物のなかへと
駆け込んでいった.
- 了 -
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