朝の連載小説
くる こう もん

第十二話「待機」


見つけた!

ここだ!


このマンションの正面, この螺旋状の階段の下なら, まださほど迷惑にもならず, かといってそれほど人目にもつかず, しかも街道を見通せるから, 走ってくるタクシーの監視にも問題はない.

問題はマンションの居住者が出てきたときにどう言い訳を行うかだが, まあ文法通り水道の検針とでも言い逃れておけばよかろう. いかにも水道局の者とは見難い風体ではあるが, あるいはガスの検針とでも言い通せば, 何やら不穏なその臭いも必然性を持ったものとしての視座が生まれるに違いない, いやそんなことはどうでもいい, とにかく, 空車のタクシーが, 現れるのを, ひたすら, 待った.


通りすぎる車を眺めつつ, 通行人から何気なく姿を隠しつつ, 待つこと十数分.
クリーム色の, 年季の入った, 旧型FRマツダ・カペラのタクシーが視界に見えてきた.
そして、「空車」の標識も.

おお, 神様.

握り締めたこぶしに, ぐっと力が入る.
あせらず, あわてず, しかし急いで, ふたたび街道にいでて, そのタクシーを止めた.


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