朝の連載小説
くる こう もん

第十一話「再出発」


また, 森本(仮名)は北の街道に向かう道をあるいている.
こんどこそ、股間を隠す体勢は万全のはずだ. 今度こそ, 失敗は許されない. これ以上, 市民の憩いの地である公共の公園敷地内を妙な格好で徘徊することはできない.

これが最後のチャンスだ.

その思いを厳しく胸と体, そしてポケットの奥の穴を通して素足と股間を隠すベトナムズボン・レックウォーマーをきつく握り締め持ち上げる両手に込め, 森本(仮名)は再び小金井公園北口のゲートを通り過ごした.

案ずるより産むは易し.

北の街道に出るまですれ違った通行人は3名, しかし混乱やトラブルの予兆もなくやり過ごすことができた. その内容はご老人おひとり, そして主婦らしき女性ふたり. しかし前回の失敗から何かを学ぶことができたのか, いまでは森本(仮名)は, まったく普段と変わらない表情のまま, 彼らとすれ違うことができる.


普段のようには歩けないこの体, いつもなら数分であるいてゆける北の街道まで, 森本(仮名)は優に十数分を費やし, やっと到達することができた.

しかしここからが問題だ. なんとかしてタクシーを拾わなければならない.

どこかに, 安全に身を隠せる場所はないだろうか. この奇妙な体, そしておそらく奇妙な臭いの男が, 空車のタクシーがやってくるまでのひとときを, なんとかやりすごせる場所はないだろうか.

どこか..

どこか...

第十話へ 第十二話へ 目次へ

$Id: g11.html,v 1.7 2006-03-25 14:07:15 morimoto Exp $