くる こう もん

第一話 「予感」


ある, 秋の日.

森本(仮名)は爽やかな初秋の並木のなか, 朝の小金井公園へと抜ける道を歩いていた.
時候は朝, 午前 8 時 40 分.
会社に向かう勤め人や登校中の高校生の流れも消え, 武蔵野のけやきの木々が静けさを取り戻しはじめた, そんな時間である. ...

森本(仮名)は, 都内の大学に通う 3 年生である. いま彼は, アルバイト先の工場へと向かおうとしていた. 西武新宿線は花小金井駅を降り, やや交通量の多い道路を南に向かって渡り, この静かな並木道に入る.
ここからバイト先までは小金井公園を抜けて10分ほど歩かねばならないのだが, 都内には珍しいほどの静けさに, 森本(仮名)はアルバイト先に待ち受ける旋盤作業のことも忘れ, 心の安らぎを深めつつ, 軽やかに歩みをすすめるのであった.

駅前の雑踏をはなれ, 住宅街をやり過ごし, 武蔵野の濃い木々のあいだを歩く森本(仮名).
昼間でさえほの暗い切り通しのかなたに小金井公園の芝生の広がりがかすかに見えてきた頃, 森本(仮名)は,なぜか,下腹部に鈍い痛みを覚えた.

...おや, 下痢かなあ.


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